洋服の青山などを展開する青山商事は5月31日にネットとリアルの融合システム「デジタル・ラボ」の導入を、2022年3月末までに新たに100店舗の導入を目指すことを発表しました。ネットとリアルの融合(OMO)は近年注目されているワードの一つですが、青山商事ではどのような対応を行っているのでしょうか。
この記事では、青山商事のOMO戦略の一つであるデジタル・ラボについて深堀りしていきます。
「デジタル・ラボ」とは?
デジタル・ラボは、ネット連携による豊富な在庫数とリアル店舗の接客サービスの両方のメリットを最大限に活かした同社の独自システムです。店内には全店の在庫と連動するタッチパネル式の大型サイネージと、タブレット端末を複数設置し、顧客はこれらの端末を通してECサイトに加えて全国の「洋服の青山」の店舗在庫から好みの商品を選べます。
ECサイトだけでなく、全国の店舗在庫にもアクセスできる点が特徴であり、導入店舗では多くの在庫を保有する必要がなくとも、豊富な品揃えを実現できるシステムです。デジタル・ラボは2016年から開始しており、現在では約60店舗まで拡大しています。
「デジタル・ラボ」のメリット
顧客側のメリットとしては、豊富な品ぞろえや注文した商品は自宅に配送されるため手ぶらで帰れる点が挙げられます。加えて、店在庫を見本として試着や最新が可能であるため、実際の商品の色柄や着心地などを確認しながら、販売員の接客を受けられる点もメリットとなっています。
さらに、一度販売員の接客を受けながらデジタル・ラボで開門を体験することで、利用者のネット通販に対する抵抗感を払拭可能です。これは店舗側の大きなメリットとして、ECサイトの利用を促進するとともに、店舗とECサイトの両方を利用する併用客の拡大にもつながると考えられています。
より効果的な売場づくりに貢献
デジタル・ラボの開始当初は主に都市部の売り場面積330.58平方メートルの狭小店を中心に導入していました。これは導入店では同じ色柄のスーツをサイズ別で保有する必要がなく、限られたスペースで多くの種類を陳列できるためです。
しかし、豊富な品ぞろえと利便性の高さなどが反響を呼び、全国の大型・中型店への導入も進められています。そのことで、デジタル・ラボ導入店ではスーツ売り場の一部を縮小し、オーダースーツコーナーやテレワークにも対応するビジネスカジュアル商品、レディス商品を拡充するなどの売り場再構築が可能になりました。
各店舗の需要や地域特性に則した売り場づくりにも役立てられています。