2019年10月から2020年6月までに実施されたキャッシュレス・消費者還元事業の影響もあり、キャッシュレス決済の存在は今や欠かせないものとなりました。PayPayなどの大手の存在が大きいなかで、地域通貨も注目を集めています。そのなかでも、飛騨・高山地域の電子地域通貨「さるぼぼコイン」は地域通貨の成功例として取り上げられることの多い地域通貨です。
今回は、さるぼぼコインの成功事例を見ながら、地域通貨のメリットや成功のポイントを見ていきましょう。
電子地域通貨のメリット
そもそも、電子地域通貨は特定の地域で利用されることを目的としたものであり、PayPayのような大手のキャッシュレス決済とはどのように違うのでしょうか。
地域通貨を利用する最大のメリットは、地域内でお金を循環させることができる点です。さるぼぼコインの仕掛け人である飛騨信用組合の古里圭史氏は、次のようにコメントしました。
「多くの地方経済は、バケツの底に穴が空いているような状態にあります。飛騨高山地域の基幹産業は観光ですが、いくら域外からお金を稼いでも、そのお金が域外に流出してしまうと意味がありません。域内に入ってきたお金を、そのまま域内で循環させなければ地域経済は活性化しません」
さるぼぼコインを仕掛けるにあたり、大手のキャッシュレスツールが競合になることは想定していたとも語られており、コンセプトの差別化として「地域のためになるかどうか」を掲げて対応を進めたと語られています。
地域の全員が利用したくなる仕組み作り
電子通貨を利用するにあたり、現金を用いずスピーディーかつ便利に決済が行える点は、すべての電子通貨に共通するメリットです。地域通貨としては、地域のためになるメリットを加える必要があります。
そこでさるぼぼコインでは、2019年8月からアプリ経由で防災情報を市民に配信しています。災害情報や通行止めなどの交通情報や、熊の出没情報などを配信することで、地域のデジタル回覧板としての機能を実装しました。
また、市県民税、国民健康保険料、水道料金、固定資産税、軽自動車税などをさるぼぼコイン上で支払えるようにし、地域の全員が利用したくなる仕組みづくりを行っています。
地域外からも利用したくなる仕組みも
さらに、さるぼぼコインはセブンイレブンと連携することで地域外からもチャージできるようになりました。加えて、飛騨・高山の事業者と連携して開発した「裏メニュー(新商品・サービス)をさるぼぼコインで購入できる情報サイト「さるぼぼコインタウン」を公開しました。これにより、地域外からも利用したくなる仕組みを実現しています。
最後に、古里氏は電子地域通貨について、他自治体が同じように成果を上げるためには「目先のことだけを考えていたら失敗する」と語っています。電子地域通貨は社会貢献性の高いプロジェクトであり、長期的な視野が必要です。
さるぼぼコインの事例をそのまま真似するのではなく、自身の地域ととことん向き合い、地域のために何ができるのかを真剣に考えることが必要だと語りました。
〈参照〉【地域DX最前線】PayPayが崩せない「地域通貨」王国 域内マネーをみんな使う理由 仕掛け人は「目先だけ考えたら失敗」/Yahoo!ニュース