家電量販店を中心に普及が進んでいる「電子棚札」。ビックカメラでは8月末までに直営店の45店舗で導入することを発表しました。さらに、電子棚札を利用した最短45分配達サービスも6月から試験的にはじめており、今後の新たな小売店の販売戦略になる可能性があります。
今回は、ビックカメラの事例をもとに電子棚札がもたらす効果と現状の問題点について見ていきましょう。
電子棚札はアマゾンなどのECに対抗する手段
ビックカメラが電子棚札を直営店45店舗で約360万枚を導入する背景には、アマゾンの存在があります。特に高価な家電の場合、訪れた店舗で即決する顧客は多くなく、アマゾンなどのECとの価格比較をその場で行う傾向にあるとのこと。
その際、レビューもあわせて確認することが多く、価格が柔軟に変動するECに対抗するために電子棚札が導入されたのです。
ビックカメラが導入する電子棚札は、赤・白・黒の3色で価格をデジタル表示するものです。スマホアプリを電子棚札にかざすことでビックカメラが運営するEC「ビックカメラ.com」でのレビューも確認できます。
また、電子棚札にはランプが内蔵されており、ネットで顧客が注文した商品の電子棚札のランプが点灯することで販売員がすぐに目当ての商品を見つけ出せるような仕組みになっています。この仕組みを使い、東京・渋谷の店舗にて、注文から最短45分で商品を配達するサービスを試験的にはじめました。このサービスも、アマゾンの物流体制に対抗する手段なのです。
電子棚札を導入することで53万時間もの作業コストを削減
電子棚札を導入する前は、1日に数千枚もの紙の値札を印刷して差し替えることもありました。しかし、電子値札は本部での価格変更が各店舗の電子値札に反映されるため、年間53万時間もの値札交換時間を削減することができるとのこと。
ビックカメラの販売員によれば「値札の交換作業が忙しくて接客ができないこともあった」との話もあり、値札交換時間の削減により接客品質の向上にも役立てられるでしょう。
また、電子値札は特定店舗のみの値下げなどにも対応でき、天候による値下げ対応などの機動的な価格変更も可能となっています。
電子棚札が抱える問題点
電子棚札は紙の値札と比較すると目を引きやすいとはいえません。ビックカメラでは従来の「最安値!」などの宣伝文句を表示するために大きめの電子棚札も導入していますが、同じ家電量販店のケーズデンキでは「色の種類など表示できる情報量が不十分」と語られています。
また、電子値札は1枚千円程度の初期費用が必要であり、POSシステムなどと連携するシステム投資も必要です。
このようにまだ電子棚札にはいくつか問題点がありますが、ビックカメラでは販売員の負担を減らし、接客などの店舗ならではの魅力を高めない限りECに対抗できないと考えたため導入に踏み切りました。
ビックカメラでの事例をもとに、今後も電子棚札は改良が進むことが予想されます。デジタル化が叫ばれている近年において、電子棚札があらゆる業種で活用される日は近いのではないでしょうか。