近年では、ECで生鮮食品も購入できるようになってきました。中国ではいち早く生鮮食品ECの取り組みが開始され、現在ではその市場規模は非常に大きなものとなっています。日本では取り組みが始まったばかりといえますが、中国における生鮮食品ECのビジネスモデルは今後の日本にも活かせることでしょう。
そこで今回は、中国の4つの生鮮食品ECビジネスモデルの概要やメリット・デメリットについてご紹介します。
4つの生鮮食品ECビジネスモデル
中国ではおもに4つの生鮮食品ECビジネスモデルが存在します。モール型スーパーのオンライン化は従来モデルとして現在も利用されていますが、注目すべきはここ数年で台頭してきた“新”生鮮食品ECです。
モール型スーパーのオンライン化
モール型スーパーがオンライン化したものであり、一般的なネットスーパーを想像するとわかりやすいのではないでしょうか。メリットとしては顧客の強いロイヤリティが挙げられますが、配達時間が1日~2日程度と長いことがデメリットです。
「前置倉」モデル
店舗を持つことなく、低コストの小規模倉庫を広範囲に展開し、注文に合わせて倉庫から商品を発送するビジネスモデル。地理的に広範囲をカバーでき、食品ロスの低減や小規模倉庫の展開による配達の低コスト化がメリットです。反対に、倉庫や物流網への高額な初期投資が必要であることや、顧客が現物を確認できない点がデメリットとなります。
「店倉合一」モデル
既存店舗を倉庫として利用するオンラインとオフラインの融合(OMO)を実現するビジネスモデル。メリットとしては購入前に現物を確認でき、品質を担保できることやキャッシュレス導入による効率化が見込める点が挙げられます。デメリットとしては、人件費やインフラ費がかさむことが挙げられるでしょう。
コミュニティごとの共同購入・配達モデル
個人ではなくコミュニティ単位での購入・配達を実現するビジネスモデル。コミュニティレベルのきめ細やかな配達や、物流投資の抑制、高い拡張可能性がメリットですが、商品の種類の少なさや不安定な管理体制がデメリットです。
中国では“新”生鮮食品ECで覇権争いが勃発
中国では4つのビジネスモデルのなかでも“新”生鮮食品ECである「前置倉」モデルと、「店倉合一」モデルによる覇権争いが勃発しています。前置倉モデルの代表例であるMissFreshでは、16以上の都市に1,700以上の小規模倉庫を展開し、品質よりも安さや利便性を求める若者を中心に月間1,000万人以上のユーザーを獲得。
対して、店倉合一モデルはアリババ傘下のHema Freshが代表的な企業の一つで、14以上の都市に160以上の店舗・倉庫一体型施設を展開しています。品質を優先する中高年層を中心に月間700万人以上のユーザーを獲得。
中国の生鮮食品EC市場は年々拡大傾向にあり、ここ数年は急成長を遂げています。しかし、一方で参入企業は減少傾向にあり、統廃合による淘汰が進んでいるのです。生鮮食品ECとして日本の一歩先を行く中国の覇権争いは、日本における生鮮食品EC市場にも今後影響を与えるかもしれません。