スウェーデンのアパレル大手であるヘネス・アンド・マウリッツ(H&M)は、2020年10月1日に2021年に全体の5%となる250店舗を閉鎖する計画を発表しました。新型コロナウイルスの影響によって長期休業に追い込まれる企業も多く、近々大規模な倒産ラッシュが起こるのではないかと危惧されているアパレル業界。そんなアパレル業界のなかで、大手がとる新型コロナウイルスの対策を見ていきましょう。
業績は回復するもネット通販強化へ舵を切る
H&Mの2020年6~8月期の決算は売上高が前年同月比18.7%減の508億7,000万スウェーデンクローナ(約5,595億円)、営業利益は同46.3%減の27億スウェーデンクローナ(約297億円)、純利益は同52.8%減の18億2,100万スウェーデンクローナ(約200億円)でした。
2019年と比較すると業績が悪化していますが、新型コロナウイルスの影響を最も受けた2020年3~5月期と比べると業績は回復傾向にあります。同期の売上高は前年同月比50.1%減の286億6,400万スウェーデンクローナ(約3,153億円)、純利益は49億9,100万スウェーデンクローナ(約549億円)の赤字となっていました。
そんななかで不採算店舗などを閉じて経営を効率化する目的で、2021年に世界中に展開する約5,000店舗のうち、250店舗を閉鎖する予定です。
H&MではコロナによってECの強化・販売網の最適化が加速することに
H&Mでは数年前からECの強化や販売網の最適化を進めてきましたが、今回の新型コロナウイルスの影響を受けて店舗の統廃合が加速することになりました。5月末時点では年内に180店舗を閉鎖し、130店舗を新規出店する予定でしたが、今回の決算発表によって2021年に100店舗を新たにオープン、350店舗を閉鎖することで全体として250店舗を閉鎖する計画となっています。
H&Mの最高経営責任者であるヘレナ・ヘルマーソン氏は「困難な状況が終わるのはまだ先だが、最悪期は脱した」と述べており、H&Mの新たな取り組みに力を入れることとしています。
2021年春に訪れると予想される倒産ラッシュ
H&Mだけでなく、「ZARA」などを展開するアパレル世界最大手のインディテックスも全体の16%にあたる最大1,200店舗を閉鎖する計画を明らかにしており、アパレル業界は全体的に脱店舗を加速させていると言えるでしょう。
緊急事態宣言が解除されて街に人が戻りつつある現状ですが、日本国内でも店頭での売れ行きが2019年レベルに回復しないと2021年初頭から過剰在庫を抱えて資金ショートするアパレルが続出するのではないかと考えられています。
生活様式も大きく変わりつつある今こそH&Mのように大胆な舵取りが必要になるのではないでしょうか。
〈参照〉H&M、21年に250店舗閉鎖へ ネット通販強化/日本経済新聞
〈参照〉アパレル倒産ラッシュ 来春に深刻化は不可避な情勢か/Yahoo!ニュース