近年AI(人工知能)は大きく進化し、さまざまな場面で活用される機会が増えています。今回は、商業施設の案内所に関わる業務をAIによってDX化した事例を紹介します。商業施設のDX推進事例として、AIの活用方法やその効果について見ていきましょう。
商業施設の案内所が抱える課題
ショッピングセンターや百貨店などの商業施設には案内所が存在し、来店客のさまざまな質問や要望に対応する従業員がいます。案内所の従業員が対応する顧客ニーズは年々多様化しており、対応が難しくなっている現状です。
また、案内所の業務量にはばらつきがあり、来店客が少ない時間帯は従業員が手持ち無沙汰になる一方で、混む時間帯は手際よく対応しても行列ができてしまいます。業務のピークに合わせた人員配置も難しく、従業員の負荷を平準化することは多くの商業施設が課題の一つとして抱えています。
AI接客システムの導入により業務負荷軽減と対応数増加を両立
そんなかで、相鉄ジョイナスはAI接客システムを導入することで案内所従業員の負荷を40%軽減しつつ、トータルの問い合わせ数を増加させることに成功しました。
相鉄ジョイナスではティファナ・ドットコムが提供するAI接客システム「AIさくらさん」を導入しています。AIさくらさんはタッチパネルや音声で問い合わせることで、AIが音声と文字で回答する仕組みです。
相鉄ジョイナスの友人中央インフォメーションは1ヶ月あたり2万5000人の問い合わせを受けており、商業施設の質問だけでなく鉄道・バス・観光地への行き方など多岐に渡る問い合わせによって、列ができることが常態化していたとのこと。
改善に向けて中央インフォメーションの場所にAIさくらさんを設置し、有人カウンターは50m奥に移設しました。これにより問い合わせの窓口を増やしつつ、有人カウンターでは個々の来店客に時間をかけて相談できる環境を作りました。
その結果、有人インフォメーションの負荷は40%(1万件/月)軽減しつつ、トータルの問い合わせ数を増加させています。
人とAIの共存がもたらす効果
AI接客システムの導入は従業員の負荷を軽減できるだけでなく、来店客の利便性も向上します。相鉄ジョイナスではリアルタイム飲食店空き情報配信サービス「VACAN」とAIさくらさんを連動させており、飲食店検索時に店舗名や場所の表示だけでなく、混雑状況まで把握できます。
AI接客システムによる利便性と併せて、人にしかできない顧客体験を提供することで顧客体験の向上が期待できます。相鉄ジョイナスの事例は、人とAIが共存することでさまざまなメリットを生み出している事例といえるでしょう。