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中国のスーパーマーケット業界に異変-店舗小売だけでは生き残れない時代へ

広報部

2021.09.29

近年、中国のスーパーマーケット業界では主要なスーパーが軒並み減収減益となっており、苦境に立たされています。この状況は一時的なものではなく、構造的な問題から発生しているとされており、中国では店舗小売だけでは生き残れない時代に突入しました。

なぜ中国のスーパーマーケット業界はこのような状況になっているのでしょうか。

ほとんどのスーパーが減収減益

中国のスーパーマーケット各社が発表した2021年第1四半期の財務報告書を見ると、主要10社のうち9社で営業収入が減収となっています。また、業界トップの「永輝(ヨンホイ)」でも純利益はマイナス98.51%と大きく下落しました。

この業績不振は一時的なものではなく、構造的なものと見られています。その理由として、2016年にアリババが提唱した新小売(ニューリテール)による業態の大きな変化や、テック企業が相次いで参入したまとめ買いECビジネス「社区団購(シャーチートワンゴウ)」の存在が挙げられています。

中国で台頭する新小売の存在

2016年にアリババが初めて新小売の言葉を使った際、同社の創業者は次のように定義しました。

「オンライン小売とオフライン小売は深く融合して新小売となる。すべての小売業は新小売になっていく」

これは店舗小売だけでなく、オンライン小売も今後は生き残れないことを指摘している言葉です。アリババは翌2017年には新小売スーパー「フーマフレッシュ」を展開し対応しています。フーマフレッシュ全体としては売り場面積あたりの売上は既存スーパーの4倍以上と公表しており、これからのスタンダードになる存在として注目されています。

フーマフレッシュでは、買い方は「店頭/スマホ注文」の2通り、受け取り方は「店頭受取/宅配」の2通りから組み合わせて自由なスタイルで購入することが可能です。配達料は無料で30分配送を実施するなど、さまざまな利用方法に対応する仕組みが構築されています。

重要とされていることは「買い物のステルス化」であり、日常生活のなかで「買い物に行く」という行動を取ってもらうことなく、日常生活の動線に買い物ができるポイントを配置していくことです。「人が商品を探す」から「商品が人を探す」に転換させることがアリババの新小売の本質であり、コンバージョンを無限にあげられる方法とされています。

中国の現状は日本の少し先の未来かもしれない

フーマフレッシュのように新小売を実現するためには、AI・IoT・データテクノロジーなどの高度なIT技術が必須であり、アリババは自分たちに優位性があると見て新小売事業を開始しました。

オンラインとオフラインの融合は日本でも少しずつ進み始めていますが、中国ではその先の未来が見えているといえるでしょう。今後、日本でも同様のことが起こる可能性が考えられ、スーパーのデジタル化への対応こそが生き残りをかけた最重要項目になると見られます。

〈参照〉スーパーマーケットの軒並み「減収減益」で示された、店舗小売の厳しすぎる現実/ビジネス+IT

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