近年、新型コロナウイルスの影響もあり百貨店は売上が低迷しています。多くの企業がECに対応しており百貨店でもEC化を進めていますが、ECよりも外商に力を入れるべきという声も聞かれます。百貨店ではECよりも外商に注力するべき理由とは何でしょうか。
今回は百貨店の現状と併せて、その理由について見ていきましょう。
百貨店業界の現状
百貨店の店頭売上比率は98%程度であり、EC化率は1~3%程度です。その理由として顧客層の年齢が高く、EC慣れしていないことが挙げられます。加えて、百貨店は「上質な生活環境を与えてくれる小売業」であり、高額な商品が多く実際に店舗に足を運んで商品を確認する人が多いためです。
ECの売上はおおむね増加していますが、店舗の売上落ち込みは20~30%もあり、ECの売上が2倍になったとしてもカバーできない現状にあります。
百貨店はECでは現状を打破できない理由
百貨店業界はコロナが収束しても店舗とECの売上を足して100%を維持することが精一杯の状況です。このような状況では、オンライン整備の経費分だけ利益を圧迫してしまいます。ECへの移行を進めるのであれば、店舗+ECで110%の本体利益を見込んだ経営戦略が必要です。
しかし、そのためにはECで現在想定している何倍もの売上が必要であり、自社の店舗利用層をECサイトへ取り込むだけでなく、他社店舗利用者を自社ECサイトへ取り込む必要があります。
百貨店にとって他のチャネルの顧客を取り込むことは非常に難しく、百貨店のEC化で失敗事例が跡を絶たない理由の一つとなっています。
百貨店ならではの「外商」を強化する
このような百貨店の低迷について、特効薬となりえるものが「外商」です。外商は企業や個人顧客のもとに出向いてモノやサービスなどを販売することですが、外商売上は三越や高島屋などの呉服系百貨店では30%にもなる店舗もあります。小田急や京王などの電鉄系百貨店では10%前後であり、平均すると20%程度もあるのです。
百貨店の既存売上を10%拡大するためには、ECでは500%以上の成長が必要ですが外商であれば50%程度で達成できます。外商の売上増加も容易なわけではありませんが、ECへのシフトにかかるコストを考えると建設的といえるでしょう。
多くの小売店がEC化へと乗り出していますが、百貨店においては外商強化こそが現状打破に必要なことかもしれません。