新型コロナウイルスの影響によって飲食店ではテイクアウトやデリバリーを実施する店舗が増えてきています。千葉県のイタリアワイン食堂「GIGINO」では、テイクアウトアプリを利用せずにテイクアウトを実現していますが、その背景には常連客への強い思いがありました。
今回は、GIGINOのオーナーである長内学氏のインタビューをもとに、人気店のテイクアウト・デリバリーの事例を紹介します。
テイクアウトアプリを利用しないテイクアウトの実現
GIGINOは千葉県営業するほぼワンオペ営業の個人店です。ワインとともにイタリア料理を楽しめるカジュアルなレストランであり、近隣住民をターゲットに営業しています。周りに同業態の競合ができることも珍しくないなかで、顧客の心をつかみ続けるための工夫として次のように語られました。
「とにかく、お客様が喜んでくれることをやるのが大切ですね。例えばうちだと、メニューのラインナップはわかりやすいものに限定しています。こういう住宅街ではマニアックなメニューよりもキャッチーなものが好まれますし、一般的に『食べたい』と思い浮かべるイタリア料理ってカルボナーラのような“定番”だと思うんです。こうした定番を自分なりにこだわって提供するようにしています」
顧客を第一に考え、顧客に寄り添った対応がどれだけできるかが成功の鍵と言えるでしょう。テイクアウトの戦略に関しても同様のことが考えられており、常連客がテイクアウトアプリの利用に慣れていない、という理由から電話やInstagramから注文を受けてテイクアウトを実現しているとのこと。
テイクアウトの延長としてはじめたデリバリー
さらに常連客のことを考え、テイクアウトの延長としてデリバリーも開始しました。
「お客様のなかには小さなお子さんがいるご家庭や、高齢の方もいらっしゃいます。なかなか見せに来るのが難しい人も多いので、こっちから持っていけたらいいなと思っていて。幅広くやろうとは思っていなくて、知っているお客様のみに行なうイメージで考えています」
テイクアウトと同様に電話やInstagramを通じて注文を受け、自前でデリバリーを行っているとのこと。デリバリーサービスを活用しないため、手数料などを考慮した商品価格にする必要もなく、配達の際の商品状態を自身で管理できる点をメリットとして挙げています。
常連客への対応がより重要に
昨今では、多くの飲食店がテイクアウト・デリバリーに対応しています。テイクアウトアプリやデリバリーサービスを利用することで、簡単にテイクアウトやデリバリーは実現できますが、常連客のことを考えると一概にそれらの利用が正解とはいえません。
テイクアウトアプリなどを利用しない場合に重要となる存在がSNSです。GIGINOではSNSでの情報発信を大切にしており、場所を問わずに多くの人に呼びかけられるだけでなく、近隣住民へのアナウンスとしても十分に役立つと長内氏は語りました。
テイクアウトやデリバリーは今後の飲食店の運営に欠かせない要素ですが、あくまでも手段の一つです。常連客への対応を重視し、テイクアウト・デリバリーを行なう目的をはっきりと見据えた上で対応することが成功の鍵と言えるのではないでしょうか。