小売・流通業界においてデジタル化は喫緊の課題の一つといえます。人手不足が深刻な日本社会において、AI(人工知能)をはじめとするデジタル化による省人化・業務効率化は必要不可欠であり、さまざまな企業がデジタル化に取り組んでいる現状です。
今回は、日本ユニシスが掲げる「New Retail Trinity Model」とあわせて、業務代行AIロボット「RASFOR」について見ていきましょう。
日本ユニシスが掲げる「New Retail Trinity Model」とは
小売・流通業界におけるデジタル化は、業務単位で行っても最終的な目的を達成することは難しいといえます。経営層・店舗・顧客のすべてを連携させたデータドリブンな改革が重要なのです。店舗運営で発生する膨大なデータを効果的に収集し、それを活用できる仕組みを構築することが求められています。
日本ユニシスでは、デジタル活用による店舗改革のコンセプト「New Retail Trinity Model」を掲げました。IoTとAIによる新たなデータ活用のカタチを打ち出し、次の3つの変革を三位一体(トリニティ)として改革することを提案しています。
- 運営の変革―プロフィットツリーの変革
- 業務の変革―店舗の位置づけの変革
- サービスの変革―価値観の変革
経営層・店舗・顧客のすべてを連携させ、店舗運営の効率化・顧客体験価値の最大化を図ることが狙いです。
業務代行AIロボット「RASFOR」ができること・効果
その施策の一環として、POPチェックや売価チェック、品切れチェックなどを自動で行うAIロボット「RASFOR」が開発されました。
RASFORは夜間の閉店後に店舗が無人となった時間帯に棚の間を自律的に動き回り、搭載したデジタルカメラで棚を撮影してその画像をAIで解析します。従来、人の手で行っていたPOPの期限切れのチェックや、棚で品切れが起きていないかなどを自動でチェックすることが可能となるのです。
「POPの外し忘れチェック」による検証では、対象となるPOP数2,381に対して、撮影したPOP数が2,369、解析できたPOP数が2,145となり、精度は約90%でした。解析率はAIによる学習精度の向上や、重なり解消などの環境整理によって97%まで向上するとのこと。
これらの検証結果などから日本ユニシスが独自に試算した結果によると、POP期限チェックや品切れチェックなどに要する時間は月間144時間となり、人件費を時給2,000円で計算すると月28万8,000円の経費が必要となります。さらに、機会損失などで発生する損害を加えると月間約50万円の経費が必要となりますが、RASFORを導入することで削減可能なのです。
RASFORは2018年1月から検証作業を開始し、2020年2月には筐体を一新した実用機の投入に至っており、今後は秋ごろをめどに市場へ投入される予定です。
〈参照〉日本ユニシス 店舗のデジタル化を支援する「New Retail Trinity Model」掲げる POP・売価・品切れチェックを自動で行うAIロボット「RASFOR」が本格稼働